RELEASE

Welcome My Friend 2020.08.26[WED] RELEASE

OKAMOTO'S NEW EP 「Welcome My Friend」

豪華タイアップ曲収録の
EPがついにリリース!

デビュー10周イヤーを迎え、自身初のベストアルバムを発売したばかりのOKAMOTO’Sが2020年第1弾EPをリリース。表題曲「Welcome My Friend」は、フジテレビ “ノイタミナ“ほか各局にて好評放送中のTVアニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のエンディング・テーマ!
初回盤には6/27開催の初の無観客生配信ライブ「90’S TOKYO BOYS”Online Broadcast”」がBlu-rayで収録!

Welcome My Friend 2020.08.26[WED] RELEASE

初回生産限定盤

【CD+BD】3000円(税別)BVCL-1097-1098

通常盤

【CD】2300円(税別)BVCL-1099

※通常盤 商品帯部分 誤表記のお知らせ

収録曲

  • 1.Welcome My Friend
    ※「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」エンディング・テーマ
  • 2.THE BEAR
  • 3.Riot
  • 4.Misty
  • 5.MOTEL
  • 6.History
    ※映画「十二単衣を来た悪魔」主題歌(11.6公開)

初回生産限定盤/ Blu-ray収録曲

「90’S TOKYO BOYS”Online Broadcast”」

  • 1.Beek
  • 2.青い天国
  • 3.NO MORE MUSIC
  • 4.NEKO
  • 5.Border Line
  • 6.Phantom(By Lipstick)
  • 7.Dance To Moonlight
  • 8.BROTHER
  • 9.ROCKY
  • 10.90’S TOKYO BOYS

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MUSIC VIDEO

INTERVIEW

本番はこれから始まりますよ。

6曲入りEP『Welcome My Friend』をリリースし、デビュー11年目の新たなる第一歩を踏み出したOKAMOTO’S。今年3月から本格的にレコーディングを始めたものの緊急事態宣言で一時中断、6月にレコーディングを再開し仕上げたという。ショウいわく「家で音楽は作れるけれど、この曲は最高だねとか、これはちょっと気分じゃないねとか、そういったことは、やっぱり実際に会って体感して思うことだし、4人の空気感を含めて作っていくもの。自粛明けに久々にみんなで会ったときにホント実感したんです。僕らはバンドを体感しながらやってるんだなって。それが僕ららしいやり方だなって」。というわけで、『Welcome My Friend』ができあがるまでの話を4人に聞いてみた。

OKAMOTO'S

11年目の新たなる第一歩。

—— 今回のEPの「はじまり」から聞かせてください。
コウキ 以前、『BL-EP』(2016年12月発売の6曲入りEP)を出したときもそうだったんですが、新しい実験をするのにEPってちょうどいいサイズなんです。しかも今回は、デビュー10年の区切りを過ぎて(5月26日がデビュー記念日)、これからどんな一歩を踏み出そうかなというとき。自分たちの新たな試みも含め、11年目のはじまりにふさわしいかなって。
ショウ まずは、「History」からレコーディングを始めたんです。EPの6曲目。
コウキ そうだったね。
レイジ でもさ、「History」が上がったのって、1年以上前じゃなかった?
コウキ 2019年の夏前にはもうあった。その後、映画(黒木瞳監督『十二単衣を着た悪魔』。11月公開予定)の主題歌を作ってくださいという話がきて。曲のストックがいっぱいあるので、映画の内容に合いそうだなということで、この曲を選んだんです。
—— ストックがいっぱいあるというのは、どれくらいですか?
ショウ 30曲ちょいぐらいですね。
—— 30曲! それは『BOY』(8枚目のアルバム。2019年1月発売)後に作り始めて?
コウキ 後ですね。「Dance To Moonlight」(今年4月発売のベストアルバム『10’S BEST』収録の新曲)もその中の1曲。
ショウ 『HELLO WORLD』(2019年公開のアニメ映画。主題歌とともに劇伴も担当)のときもそうだった。ストックの中の1曲。
コウキ とにかく、誰かのためとか何かのためとかではなく作るからどんどん曲もできていって。それが結構楽しいというのもあったんです。
—— 完全に、自分たちのためだけの曲作り、ということですね。
ショウ それまでは、こういったタイアップ曲は、クライアントが要求するものに歩み寄って作っていた部分があって。もちろん自分たちの曲として自信を持てる曲ではあるけれど、期待に応えなくちゃいけないという思いも強かったというか。
コウキ 若かったしね(笑)。
ショウ でも今回は、そういったこととはまったく関係なく、締め切りもなく、コウキと僕と2人で曲を書くという作業をずっと続けている中でできあがった。何に縛られることなく、自由気ままに、書きたい曲を書き、作りたい曲を作る、その結果、たまたま映画の雰囲気やテーマにも合っていたから主題歌になった、そういう感じ。だから、結果としてタイアップ曲ではあるけれど、それは、いまの僕らの気分を表現しているものであって。イコールで結ばれているんです。そういうのってデビュー以来初めてかも。10年目にしてようやく(笑)。
レイジ しかも、客観的に聴いても、どれもクオリティの高いデモがそろってた。結構驚きましたね。「できたよ」って30曲がポンと送られてきたときは。
—— え、突然送られてくるんですか? その前段階とかもなしに?
レイジ ないです。スケッチみたいなノリの曲は1曲もなかった。歌詞もほぼフル尺でできていたし。え、これもう完璧じゃん、じゃあ、ここからどの曲入れる? って。選択しかしてないもん、オレとハマくんは。
ハマ 僕ら演奏さえしなくてもいいんじゃないのってぐらい(笑)。ホント、いい曲ばっかりそろいましたよね。

「History」は人類の歴史であり僕らの歴史でもある。

—— では、制作順にいきましょうか。じゃあ、まず、「History」を映画の主題歌用に仕上げた、ということですね。
ショウ そうです。映画に合った曲を選んで歌詞を新たに書き下ろして。でも、詞ももともとつけていたものを生かしているので、半分書き下ろしという感じですね。とにかく、映画が歴史ものだし、僕らも10周年だし、自分たちのいままでのことを振り返ればシンクロするかなって。初の武道館(2019年6月27日)が終わった後に書いたので、自分がそこから見た景色のことなんかも思い出しながら。人類の長い歴史の中に、僕らの歴史もある、続いていくよね、これからもって。
—— つまり、「History」はOKAMOTO’SのHistoryでもある。冒頭の歌詞「Seems long but short time, what have I done? did i do anything I really wanted to(長いようで短かった、現在まで自分はなにを成し遂げただろう?)/Have I tolden what I should and have I hidden all the rude, have I really existed here(伝えたいことはちゃんと伝えられたか?失礼なことは全部隠し通せたか?自分はほんとにここに存在していたのだろうか)」もそれを物語っていますよね。
ショウ タイアップワークでいちばん気をつけるのは、自分たちとのつながりで。映画のテーマ曲になるわけだから、作品の世界観とはもちろんシンクロしたい。でも、自分が経験したことのないことは歌いたくない。そこはウソにならないようにしたいんです。そうすれば、バンド自身のための曲になるし、曲自体の強度もあがる。それで、映画とオレたちはどんな部分でシンクロできるだろうかと探して。
コウキ 映画は、タイムスリップものなんです。現代に生きる主人公がタイムスリップして平安時代に行くっていう。
ショウ それで、主人公が旅する感じと僕らのバンドマンとしての旅と、マッチする部分もあるかなって。そんなところで書きましたね。
—— ちなみにショウさんは、詞を書くときに、英語と日本語の配分は考えたりするんですか? 
ショウ 考えるし、考えないし。わりと感覚的です。今回、Aメロのところはグライムっぽいラップを意識してみたんですが、僕の英語、全然イギリス訛りじゃないんで結局グライム感が出ませんでしたけど(笑)。

「BRIAN SHINSEKAI」と「Welcome My Friend」。

コウキ で、次に作ったのが「Welcome My Friend」。これもテレビアニメ(現在フジテレビで放映中のアニメ『富豪刑事Balance:UNLIMITED』)のエンディング曲になってます。
—— EPのタイトル曲であり、11年目の幕開けにふさわしい曲ですよね。特に、サビがとても印象的です。「Welcome my friend let's get to work(ようこそ友よ、仕事にかかろう)/Everybody's here, it's time to make some miracle(みんなここにいる、さぁ奇跡を起こそう)/Show must go on I just need you, more than ever(こんなとこで終われないだろう?今、どんな時よりもお前が必要なんだ)」。いまの世の中の気分に合っている感じもします。
コウキ でもこれ、コロナ前なんですよ。去年の冬ぐらいにタイアップのオファーがきて、レコーディングしたのが今年の頭でしたから。
レイジ タイアップの話がきたときに、どの曲投げる? って話になって、アニメのテンションと曲とショウのボーカルの感じが生きてくるのはコレがいちばんだよねって。こういうタイアップでいつも思うのが、アニメを観るのはアニメ好きであってロック好きじゃない。そういう人に届けるときに、「これがオレらのロックだ!」と押しつけても意味がない。というか、なんの意味もなかったというのを10年やってよくわかった(笑)。しかも、タイアップは大変ありがたい話ではあるけれど、一生懸命オレらが作った曲がクライアントにいろいろ意見され、それを修正して、というのを重ねていくと、「一体なんのためにオレらは音楽やってんの?」ってなっちゃうとこともまぁまぁありましたし。
—— そんなつらい経験が(涙)。
レイジ だから、そうじゃなく、この曲ならばストレートにいける、そのくらい確信のある曲じゃないと、タイアップをしてもあんまり意味がないんです。で、今回は、そういう中でもめちゃめちゃうまくいったパターン。「BROTHER」(2016年6月発売の9枚目のシングル。Netflixドラマ『火花』の主題歌)のときと同じくらいうまくハマったと思う。
コウキ 僕の中でひとつこだわったのは、ハードボイルドさみたいなところですね。元気いいロックとハードボイルド。アニメが刑事の話なので、ブルージーな感じは若干意識したかもしれない。とはいっても、ほぼデモのまんまで。アレンジもそうだし。手応えとしては「BROTHER」ぐらいの会心の一曲ですね。
—— アレンジの面でいちばん凝った部分ってありますか?
ショウ やっぱブライアンじゃない? ブライアンの新世界。
コウキ そうだね。EP全体を通してブライアンの存在はすごくデカいよね。
—— ん? ブライアン?
ハマ ははははは(笑)。きみたち、説明しなくちゃわかんないよ。最近、隠れメンバーがいるんですよ、「BRIAN SHINSEKAI」という。
レイジ 名前にブライアンが付くミュージシャンってみんな最高じゃないですか。ブライアン・ジョーンズ、ブライアン・メイ、ブライアン・イーノ、ブライアン・アダムス。
—— ブライアン・ウィルソン、ブライアン・フェリー、ブライアン・セッツァー(笑)。
レイジ そうそう。そのブライアンの2020年版。新しいブライアンです。
コウキ 彼はBRIAN SHINSEKAIとしても活動しているし、曲提供もするソングライター。学年は彼が1個下だけど、ほぼ同世代。去年、『HELLO WORLD』の曲を作ったときに、キーボードを入れたいなと思って、誰かアーティストを呼びたいって話をしたときに、レイジさんが「ブライアンがいいんじゃない?」って。
レイジ そもそもの出会いの話をザッとすると、2009年の「閃光ライオット」(OKAMOTO’Sデビューのきっかけとなったロックフェス)にさかのぼるんです。僕らは当時「ズットズレテルズ」(OKAMOTO’Sが参加していた企画バンド)として出たわけですけど、そのときに「ブライアン新世界」(2017年より「BRIAN SHINSEKAI」に改名)っていうグラムロックの超変わり種みたいなソロアーティストがいたんです。
コウキ キワモノだったよね(笑)。
レイジ 偽デヴィッド・ボウイみたいな(笑)。僕らも18だったけど、ブライアンはそれよりも若い17で。基本EDMで、打ち込みで曲を流しながら一人でステージで歌う人。彼のソングライティング力は当時からすごかったんです。で、2009年に出会って以来、ブライアン新世界はアティチュードも才能もすごい! ってオレは言い続けていたんですが、誰にも引っかからず。でも、ずっと地道に音楽活動を続けていたので、『HELLO WORLD』の劇伴と主題歌をという話がきたときに、「オレらロックバンドだから、ほろりと涙するシーンとか、恋のウキウキワクワクみたいなシーンに曲をつけるのは難しいよね」って話をしていたときに、「そうだ、アイツの出番じゃん!」と思ってブライアンに声をかけて。そうしたら案の定、オレらが大喜びする曲を書き上げてきてくれた。そこからなんです。キーボードのアレンジとかすごくいいから、今度のEPでも一緒に作業してもらおうよって。いまはもう、欠かせない存在になりましたね。
—— 「第5のメンバー」ということですね。
レイジ この1年ぐらいはずっとそう。「Dance To Moonlight」からだよね。
コウキ そう。もともとの30曲のデモはピアノで作っていたりするので、キーボードを入れたいというのは数年前から構想としてはあったんです。そうすれば楽曲の奥行きも増すからいいなあって。ただ、この4人の関係性に入ってこられる人で、なおかつ、同世代がよくて、となるとなかなか……(笑)。
レイジ 超難しいバランス感覚なんですよ、オレらって。まず、僕らが好きな人じゃなきゃいけないのは大前提。で、人柄がよくなきゃいけない、性格もよくなきゃいけない、ほどよくユーモアがあって、カマせる度胸がなくちゃいけない、礼儀正しい、遅刻しない。超ハードルが高いんですけど、ブライアンはそれを全部こなしてるんですよね。
—— すごい! 4人の中にすんなり入っていけるブライアン無双(笑)。
レイジ しかも、音楽的アプローチも積極的にしてくれるので、「Dance To Moonlight」の衝撃的なイントロを考えてくれたのが、ブライアン。オレたち4人だけじゃ、あんなイントロはつけられなかった。
—— なるほど。それで「Welcome My Friend」なんですかね?
レイジ ああ、そうだ。意識してなかったけど、そうかもしれない。友達を招き入れてる(笑)。
—— もとい、『HELLO WORLD』の主題歌のタイトルは「新世界」でしたし。
ショウ ちなみにこれ、なぜ「Welcome」なのかというと、「ムジカ・ピッコリーノ」(ショウがレギュラー出演しているEテレの音楽番組)で、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」をやって、そこからひらめいたんです。“Welcome to the Hotel California~♪”ってサビ、超ヤバいなって。
コウキ あ、そうか。そこからきてたんだ。知らなかった。
レイジ オレも知らなかった。
ハマ そう言われればそうか。
ショウ 「ようこそ」で始まるサビ、すごいなって。そんな曲、イーグルス以外にある? 
レイジ あるよ、光GENJI「パラダイス銀河」。「ようこそここへ〜♪」で始まるじゃん。
ショウ ああ、あったか(笑)。
全員 あはははは(笑)。
—— アレンジに関してはどんなふうに話し合いましたか? 転調がドラマティックでいいなと思いましたが。
コウキ すごく話し合いました。転調もそうですが、いままでになかったコード感とか、ボコーダーの感じとか、小技がすごく利いているというか。
レイジ 無駄じゃねえぜ10年間という感じだよね。アウトロのギターも超いいし。
ハマ 僕は昨今、デモである程度入れてもらっているベースラインをそのまま採用することが多いんですよ。運指ってやっぱりクセなんで、ショウとかコウキが作ったもののほうがむしろ新鮮だから。
—— 自分では思いつかない展開がいい?
ハマ ですね。いままで結構、ゼロから作ることが多かったんですが、ここ数年は、これでいいじゃん、というか、これがいいじゃんっていう曲が増えてきてるんです。
—— 成長しているということですね、ソングライティング力も。
ハマ そうですね。あとはやっぱり、ブライアンが入ったのは大きい。
レイジ 4人で煮詰まったらブライアンにっていう(笑)。
ハマ 大物ミュージシャンの伝説であるじゃないですか。レコーディング現場に愛犬を連れてくるとか、音楽とは関係のない友達をスタジオに連れてくるとか。ああ、こういうことなんだなって。客観視線が入ると空気がかわるんです。しかも、ブライアンは僕らと同じミュージシャンだし。
コウキ ビートルズが煮詰まってビリー・プレストンに参加してもらったみたいな。
—— ビースティ・ボーイズにマニー・マークがいるみたいなものですよね。
ハマ マニー・マーク、大好き。
レイジ しかもブライアンって、なにをやっても「ああ、いい。いい、いい」って(笑)。
ハマ するどいことは別に言わない(笑)。
レイジ 「ああ、いい。いい。確かに。いい、いい」(笑)。
—— 全部吸収してくれる存在なんですね。
ショウ ブライアンもシンガーなんで、オレの歌にずっとハモってくれたりしてくれるんです、プレイバック中に。
全員 あはははは(笑)。
レイジ ホント、ブライアンはアーティスト。とにかく変。知れば知るほどいい。10年観続けてるけど、ずっとブレない存在なんだもん。
ハマ こじれきってるんだよね、僕らもですけど(笑)。
—— じゃあ、すごく通じる存在なんですね。同世代として。
ハマ 通じます。人としての温度感もちょうどいい。
レイジ 単純に音楽についての知識量も豊富。だから話をしていてもストレスがないというのもあって。ロックのキーワードを出したときに、ああこういう感じねってすぐに対応してくれるんです。例えば、「ドアーズっぽいの入れようよ」っていえば、それですぐ通じるし。
—— え、でもそれって基礎中の基礎じゃないですか? ドアーズといえばあのエレピのフレーズっていう。
レイジ 「それどういうのだっけ?」っていうのが僕ら世代だと普通なんですよ、残念ながら。
コウキ だから、めちゃくちゃやりやすい。ブライアンのキーボードの相乗効果でギターのフレーズも入れやすくなりましたし。ハマくんもそうでしょ?
ハマ めちゃくちゃスムーズです。
ショウ OKAMOTO’Sって、レコーディングのときにパーツパーツで録らないんです。いまだに「せーの」でみんなで一緒に演奏するっていうやり方なんです。そんなときにブライアンがキーボードを弾いてくれると、それぞれのパートの足し算引き算がしやすくなる。それまで10年一緒にやってきたごとく演奏してくれるので。
—— いま、ブライアンさんのことをウィキペディアで調べてみたんですが、高校時代はゴルフ部に所属してたんですね。
レイジ そうそう! 石川遼と一緒にゴルフをやってたらしい。すごい変なヤツ。ブライアンにも単独インタビューしてほしいなあ。OKAMOTO’Sのことをどう思ってたのか聞きたい。

山口冨士夫に捧げた「THE BEAR」。

—— そのほかの楽曲はどんなふうに進めましたか?
レイジ 「THE BEAR」「Riot」「Misty」は同時進行だったよね。
コウキ 「MOTEL」以外は全部一緒に録ったんです、3月中に。
ショウ 実は「THE BEAR」の原型はもともとあって。『BOY』のときは選ばなかった曲だったんです。で、それとは別に、歌詞だけ書いててメロディがなかったものもあったので、「こういう歌詞を乗せる曲を書きたいんだけど」ってコウキくんに相談したら、「この曲がBPMもあってていいんじゃない?」って。結構、勢いで作った感じですね。
—— 「俺に言ってたFujio Yamaguchi」っていう詞が刺さりました。ショウさんの好きな村八分、山口冨士夫リスペクトですよね。
ショウ 「マジ間違いないものだけ間違いないのは間違いない」ですから。
—— スチャダラパーいわくの「よくなくなくなくなくなくない?」的なものも感じます(笑)。
コウキ もともとこの曲を書いたときのことを思い出したんですけど、とある猟奇事件が動機になっているんです、実は。その事件が起こったのが自分の家の近所で、そんなヤツが住んでいたのかと。その衝撃もあって。
—— 結構、クライムサスペンス的な背景が。
コウキ クリミナルな楽曲なんです。
ハマ オレもやってみたいと思って書いたんでしょ(笑)。
レイジ 歌にすることでそういう欲を解消してたんでしょ(笑)。
コウキ かもね(笑)。とにかく、僕らはロックバンドだし、この凶悪な時代にインパクトのある楽曲を残したいという思いもあったというか。
ショウ だから、若い子がいちばん聴き慣れてる譜割りにしようというのもありましたね。それでトラップっぽくしたんです。トラップのラッパーだったら言わないようなことを、あのテンションで言うと入りやすくなるかもしれないなって。しかも、ニルバーナっぽい曲が始まったなと思うとそっちのノリになるのが逆に面白いというのもあったし。
—— 相変わらずのへそ曲がりぶりで(笑)。
コウキ そういった悪ふざけもEPだったらわりとできるんです。
ショウ いい悪乗り。
レイジ このとき弾いてたベースって何?
ハマ あれはジャズベースだね。
レイジ ミッシェル・ガン・エレファントっぽい感じがあるよね、このベースは。
コウキ 「カサノバ・スネイク」ね。
ハマ 音は若干そういうふうにしてもらいました。
—— ベースからドドドドって入りますもんね。
ハマ エンジニアにいじってもらいました。ストラングラーズみたいな悪い音にしてくださいって。悪い感じって、ホントに悪くないと出ないんですよ(笑)。
レイジ ストラングラーズみたいにしょっちゅう喧嘩してると違う筋肉がつくから音が変わるとかあるのかな?
ハマ わかんない(笑)。たぶん、弾き方もあるんでしょうけどね。
—— 足広げて、つんのめって弾いてるイメージです(笑)。
ハマ そうそう。けんかっ早いイケメンの感じ。そもそも手足のリーチが長くないと出ないんだろうね、ああいう音は。僕だと尺が足りないんですよ(笑)。

「Riot」は80’Sニューウェイヴのノリで。

レイジ 「Riot」に関しては、僕は何もやってないに等しい。「デモのままがいいからドラム入れなくていいんじゃない?」って感じだったもん。「一応録っとく?」って。だから、「ダン、ドン、ドン、ドドドドン」しか入れてない。しかも叩いたのは1回だけ。あとは打ち込みっすね。
—— これは詞がとってもカッコいいんです。いまの世の中に対する痛烈な批判でありメッセージだなと思いましたし。
ショウ でもこれ、「ブラック・ライヴス・マター」が盛り上がる前に書いていて。不思議とリンクしたんです。コロナのこととかも相まって。
—— ああ、その前に書いていたものだったんですね。ジャストいまを描いていると思ったので、てっきりこの時期に書いたのかと。どうして「血を流して生きるなら死にたい」のところだけ日本語なんですか?
ショウ もともとデモの段階がそうだったんです。あの部分だけ日本語。ただ、曲にするときに、そこも英語にしたんだけど、コウキに「あそこは日本語のあの感じがインパクトあって好きだったよ」って言われて。じゃあ、そのまま日本語にしておこうと。
—— どういう気持ちで書いたんですか?
ショウ 日本人って、みんないろんな不満があるのに、それをどうにかしようとするムードがないとか、若い人たちはなにひとつ行動しないとか、不満があってもデモをすることもしないとか、そういったことってずっと言われているじゃないですか、ここ何年も。でも、僕らの周りは決してそうではなくて。だから、政治的に何かもの申すということではなく、みんなこういう感じで思ってるよね? っていう空気感を、自分なりのアンテナで感じ取ったことを書いてみた、っていう感じですね。
ハマ 僕はね、詞もそうだけど、曲もとってもいいなと思ってて。いままで全然やってこなかったニューウェイヴなんです、曲調が。単純に洋学的なニューウェイヴっぽさもあるけれど、プラスチックスとかそういった日本流に解釈したニューウェイヴを感じるというか。パッと聴くとふざけているように聴こえるかもしれないけれど、僕たちはいたって真面目にカッコいいニューウェイブやってますっていうね。
—— 確かに。ショウさんの歌い方がニューウェイヴ。プラスチックスも標榜していたトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーン的なものも感じます。
ショウ そう。トーキング・ヘッズの歌詞は妙に刺さっちゃって。そういう年頃になったのかなあとも思います。働いて働いてがんばってやってきて、自分の建てた家には美しい妻がいて、大きな犬もいて、なのにある日突然、オレはいままでなにをやってきたんだろうと思ってしまった、そういう都会の神経衰弱者みたいな、そういう歌詞でもあるんです。
レイジ だから、「Riot」はほとんどデモのまんまなんだよね。ギターと歌を入れ替えたぐらい。ハマくんが奇抜なベースを弾いたよね。
ハマ フィリップ・クビキのファクター・ベースを使いました。
—— フィリップ・クビキ?
ハマ フィリップ・クビキっていうおじさんがいて、もともとフェンダーにいた人なんですけど、独立して全部ハンドメイドで作ってて。僕は以前、ずっと欲しかったモデルをみつけて買ったんですよ。とはいえ、全然使えないなと思ってたんですけど、曲調にかなりあうんで、それを弾きました。
レイジ フィリップ・クビキって、松井常松さんのベースみたいだよね。ていうか、常松さんのベースもこういう音してるよね?
—— 元BOØWYの松井常松さん。
ハマ そうかも。松井さんのベースもクビキだったかも。そういう楽器にしか出ない音ってあって、フェンダーじゃこういう音は出ないんですよ。

「Misty」はもろレッチリです。

—— 「Misty」は詞・曲ともにセンチメンタルな感じがしました。「ブコウスキー」という名前が出てくるせいか、ビート小説っぽい雰囲気もあって。アメリカの荒涼とした景色を思い浮かべました。
ショウ ブコウスキー、好きなんですよね。僕のヒーローは、チャールズ・ブコウスキーと中島らもと吾妻ひでお。
—— 全員飲んべえ(笑)。しかし、ショウさん自身のことをストレートに歌っているようにも感じたんですが。
ショウ 確かに、自分のパーソナルな部分が出てますね。明確なこの瞬間というわけじゃないんですが、ノスタルジックなものに思いを馳せるというか。
—— お父さんの言葉、いいですよね。「My father Scott told me he thought he will die before 30 and one day he woke up and he was 60(俺の父スコットは30歳になる前に自分は死ぬだろうと思ってたのに、ある朝目を覚ましたら60歳になっていたんだと俺に教えてくれた)」
ショウ 年に1回しか会わないのに、ホントよく言われるんですよ。「ある朝起きたら60歳になってた」って(笑)。僕はまだ30だし、60の人の気持ちはよくわからない。でもいつか、自分も「ああ、このことか」とわかることがくるのかなって。
レイジ やっぱ、これはレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)でしょう(笑)。そう思いませんでした?
—— ああ、確かに。レッチリっすね。
レイジ ああ、そういえば、じゃなくて、聴いた瞬間にレッチリですよ(笑)。
—— じゃあ、レッチリぽくしようと?
レイジ そう。しかも地味目の曲「スカー・ティシュー」の感じでいきたいよねって。
ハマ でもさ、演奏する側として言わせてもらうと、レッチリみたいな曲って、結局、ベース以外がサボるってことなんでね。
全員 あはははは(笑)。
ハマ フレーズがないと成立しないんですよ、こういう曲は。いいサビをひらめいてよかったなと思いますよ。だってコードだけを弾いていたらなんでもない曲になっちゃうんだもん。やってみてわかる、レッチリの難しさ(笑)。
レイジ レッチリっぽい曲をやる人って、だいたい「アラウンド・ザ・ワールド」なんだよね。「スカー・ティシュー」で「ぽさ」を出してくる人はあんまりいないかも。
コウキ そっちのほうが好きなんだよね。でも難しい。
レイジ シンプルな曲ほど難しいもん。
ハマ だから、レッチリをやるって意外と難しいんだぞ、おまえたちっていうことですよ(笑)。「90’S TOKYO BOYS」(2017年発売の7枚目アルバム『NO MORE MUSIC』収録曲)はもろレッチリじゃんって、キッズたちからそういうお言葉をよくいただくんですけれども、ならきみたち、「もろレッチリ」をやってみなさいよって(笑)。でも僕が学生だったとしたら、きっとそう言うだろうから、こっちの意図がちゃんと伝わっているのはいいなって思いますけどね。だから、レッチリを体現するのは難しいけど、ちゃんと実現したぞって。「できてる感じ」が出せましたね。
ショウ あともうひとつ、この曲は「グリーンバード」っていう新宿御苑のレコーディングスタジオで録ったんですけど、ファーストアルバム(2010年5月発売のアルバム『10’S』)から僕らはずっとそこで録ってきているんですが、今年の4月1日で営業終了したので、僕らはほぼ最後の客だったんです。音を担当してくれた青木さんもグリーンバード出身のエンジニア。場所にもバンドにもゆかりがある人と一緒にそこで録ったという。そういう切なさが音にも出てるような気もしますね。
コウキ しかし、僕らの馴染みのスタジオがどんどん減っていくよね。
—— コロナの世の中というのもあるんでしょうか。
ハマ ご時世というより、僕らみたいなバンドが減ってるという現実もあるでしょうね。スタジオを使わずにレコーディングする人たちも増えているし。寂しい限りですけどね。

「MOTEL」はティン・パン・アレー meets QUEENで。

—— そして、「MOTEL」が最後に録った曲ということですか?
ハマ 御苑の「グリーンスタジオ」で「Misty」まで録ったところで緊急事態宣言になっちゃったんで。6月に入ってから録りました。世間的にいう自粛明けに。
—— この曲は聴いた瞬間、さっきも話に出てきた「ホテル・カリフォルニア」な感じがすごくしたんです。
ハマ そうでしょう、そうでしょう。
コウキ 最初はアレンジが違ってたんです。もうちょっと打ち込みっぽかったというか。
レイジ もともとポップだったよね。
—— へえ〜!
コウキ でも、いざレコーディングのときに演奏してみたらちょっと違うなと。それで持ち帰って。自粛期間中にアレンジし直して、こうなりました。
ハマ ユーミン(松任谷由実)さんの「ベルベット・イースター」とかそういう感じにしたらいいんじゃないかと。でも、作った本人にしてみれば180度違ってしまうから、持ち帰りたいと。唯一持ち帰って練り直した曲ですね。
レイジ それでさらにブライアンと一緒にアレンジして。
ハマ ティン・パン・アレー meets QUEENな感じになったと。要は、80年代の日本のポップスの感じが出せたらいいなっていうのが狙いですね。70年代後期ぐらいの、シティポップスといわれるよりも前の時代の感じ。
—— ニューミュージックな感じですね。
レイジ あとアルフィーね。
—— ジ・アルフィーも入ってますか(笑)。
レイジ 高見沢(俊彦)さんっぽいなあと思った。
コウキ ツインギターのところでしょ。あれはちょっとした加減でX JAPANにもなるし、ブライアン・メイにもなるという。微妙なラインを攻めたんです。
—— あの時代のニューミュージックの独特の哀愁感もあっていいと思います。
ハマ こういう曲をやれるバンドがいないんで、やったほうがいいなって。
コウキ アレンジが変わって最初の道筋と違ったんでどうかなと思ったけど、元よりもすごくよくなったなって。めっちゃいい曲になりました。
レイジ 元のバージョンも何かで発表したいよね。全然違うから。
—— そして、歌詞はなぜ「MOTEL」なんでしょう?
ショウ これはねえ、なんでモーテルだったんだっけ?
コウキ やっぱり、「ホテル・カリフォルニア」の話をしてたからだと思うよ?
ショウ 『BL-EP』に入ってる「Phantom(by Lipstick)」っていう曲があるんですが、それは松本隆さん作詞の「ルビーの指環」を意識して、完全にフィクションの世界を英語で歌ったものだったんですが、それを日本語でやってみたいなというところもあったと思います。だから完全にフィクションの世界。ロードムービーを観た後だったから「MOTEL」だったんだと思う。それがモロに出てる気がする。
—— 「ケミカルな見た目の 君が好きだったジュース」っていう言い回しに、なるほど、松本隆イズムを感じます。
ショウ ただ、それを僕が歌うと、松本さんの洗練された世界観にはならなくて。甲本ヒロトさんが昔言っていた言葉に、「ラモーンズをやりたいと思ってもラモーンズにはならなくて、違ってしまう部分がその人の個性」っていうのがあるんですが、僕らもそういうことになったらいいなって。

テイラー・スイフトに曲の作り方を学びスピードアップ!?

—— ショウさんとコウキさんの曲作りって、どんなふうに進めているんですか?
ショウ いつも、コウキの家で作業するんですが、必ずマクドナルドでテイクアウトしてからコウキの家に行くんです。で、行ってダブルチーズバーガーを食べて、そこから曲作りが始まるという。そういうルーティンでやってます。
コウキ マジで毎回マクドナルドを食べるから、去年、それを30回ぐらい繰り返していたんですけど、そうすると、マクドナルドの匂いを嗅ぐだけで曲を作らなくちゃいけない気分になっちゃって(笑)。
ハマ 完全にパブロフ(笑)。
レイジ 何時ぐらいから行ってるの?
ショウ お昼の12時、1時くらいかな。そこから日が暮れて夜の7時ぐらいまで。だいたい1〜2曲完成して帰る感じかな。コロナの自粛期間中は行けなかったけど、それが週イチくらいのペースで。
レイジ とすると、オレらに送ってない曲って、ほかに何曲ぐらいあるわけ?
コウキ 12〜13曲ぐらいかな。
レイジ 多いなあ! だって、例の30曲だってまだ6曲ぐらいしか消費してないわけじゃん。
コウキ そうだね。しかも30曲送った、その1曲目が「Welcome My Friend」だったから。こちらとしては、本番はこれから始まりますよっていう(笑)。
レイジ ということは、あと36曲ありますよってことか。
—— すごいスピードで曲を作ってるんですね。
コウキ 早いっすよ、ショウさんの曲作りは。
ショウ この間もCM曲を作ったんだけど、1分半くらいできちゃったんです。「できました。コウキさん、ここにギターお願いします」「はい、わかりました」で完成。
コウキ それは手を抜いてるとかそういうことじゃないし、何もないところから突然できるわけでもない。大事なのは事前のおしゃべりだったりするんです。内容は別になんでもよくて、こんな映画を観たよとか、それこそショウさんがマック食べながら話すんです。最近聴いたこれがよかったとか。そういう話をすればするほど、早くなる。
ショウ ちょっと前に、テイラー・スイフトのドキュメンタリーを観たんだけど、テイラーがスタジオに行って、「私ね、恋人にふられたの」って話をすると、サウンドを起こす係の人が、「それで? それで?」って話を聞くわけ。するとテイラーが、「私、すごく怒ったの」「それで?」「部屋をバーンと出て、車に飛び乗ったの!」「よし、それでいこう!」って感じで曲を作って。
コウキ 次のシーンではスタジアムでその曲を歌ってるっていう。
全員 あはははは(笑)。
レイジ え、なに、きみらも「それで? それで?」ってやるの?
コウキ やったやった(笑)。
全員 あはははは(笑)。
コウキ それは次のデモで提出します(笑)。そういう作り方って、いままでよくわかんないと思ってたけど、あるときからモードが切り替わって、それがめっちゃ楽しくなっちゃって。ジャック・アントノフっていう人がテイラーのプロデューサーなんだけど、いい曲ばっかりだし、そういう作り方も面白いなって。
—— じゃあ、ショウさんがテイラー・スイフト状態で(笑)。
ショウ 僕が話せば話すほどにじゃんじゃん曲ができます。
ハマ メルカリに出したらいいじゃん。
全員 あはははは(笑)。

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